2016
12.05

“いのち”の引っこし③/④

Category: 未分類
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「さむいよう」「こわいよう」。葉っぱたちはおびえました。
 そこへ風のうなり声の中から、ダニエルの声がとぎれとぎれに聞こえてきました。
 「みんな引っこしをする時がきたんだよ。とうとう冬が来たんだ。ぼくたちは、ひとり残らず、ここからいなくなるんだ。」
 フレディは悲しくなりました。ここはフレディにとって、居心地のよい夢のような場所だったからです。
 「ぼくもここからいなくなるの?」
 「そうだよ。ぼくたちは葉っぱに生まれて、葉っぱの仕事を全部やった。太陽や月から光をもらい、雨や風にはげまされて、木のためにも他人のためにもりっぱな役割を果たしたのさ。だから引っ越すのだよ。」
とダニエルは答えました。(中略)
 「引っこしをするとか、ここからいなくなるとか、きみは言ってたけれどそれは---」
とフレディは胸がいっぱいになりました。
 「死ぬ、ということでしょ?」
 ダニエルは口をかたくむすんでいます。
 「ぼく、死ぬのがこわいよ。」とフレディが言いました。
 「そのとおりだね。」とダニエルが答えました。
 「まだ経験したことがないことは、こわいと思うものだ。でも考えてごらん。世界は変化をしつづけているんだ。変化しないものはひとつもないんだよ。春が来て夏になり秋になる。葉っぱは緑から紅葉して散る。変化するって自然なことなんだ。
 きみは、春が夏になるときこわかったかい?緑から紅葉するときこわくなかったろう?
 ぼくたちも変化しつづけているんだ。死ぬというのも変わることの一つなのだよ。」 (中略)
 その日の夕暮れ、金色の光の中をダニエルは枝をはなれていきました。
 「さようなら フレディ。」
 ダニエルは満足そうなほほえみを浮かべ、ゆっくり静かにいなくなりました。
 フレディは、ひとりになりました。               

次の朝は雪でした。初雪です。
 やわらかでまっ白でしずかな雪は、じんと冷たく身にしみました。
 その日は一日どんよりしたくもり空でした。日は早く暮れました。フレディは自分が色あせて枯れてきたように思いました。冷たい雪が重く感じられます。
 明け方フレディは迎えに来た風にのって枝をはなれました。痛くもなく、こわくもありませんでした。
 フレディは空中にしばらく舞って、それからそっと地面におりていきました。
 そのときはじめて、フレディは木の全体の姿を見ました。
 なんてがっしりした、たくましい木なのでしょう。これならいつまでも生きつづけるにちがいありません。
 フレディはダニエルから聞いた“いのち”ということばを思い出しました。
“いのち”というのは、永遠に生きているのだということでした
(以下、④/④につづく)

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