2014
11.30

「ハイ」で悟る①/③

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rinzai0043.jpg [臨済禅師(白隠画)]
  
 「臨済録(りんざいろく)」の行録(あんろく)の中に面白い逸話があります。行録というのは、僧侶の行状伝記を記録したものです。昔の禅僧は、道場での修行が済むと、諸国を行脚して、これはという師匠と問答による他流試合をしたようですが、そのときの様子を記録したものです。
 後に臨済宗の宗祖となる臨済義玄禅師(唐代に活躍した高僧)も例外ではなく、直接の師匠である黄檗(おうばく)禅師のもとで悟りを開いた後、諸国に出て、何人かの有名な師匠のもとに出向いて問答をしています。そのときの様子を記したものの一つが、今回紹介する話です。ただし、相手は僧侶でなく、一人の老婆です。
 「無文全集」(禅文化研究所発行)に収められている山田無文老師の提唱(講義)の中から紹介したいと思います。
 臨済が道で一人の老婆に出会った。(中略)この婆さん、いつも鳳林寺へ行って提唱を聞いたり、雲水の相手になっておるだけのことはある。臨済を呼び止めて尋ねた。
「雲水さん(訪ねてきた臨済のこと)、どこに行きなさる」
「これから鳳林寺へお訪ねしたいと思っておる」
「せっかくだが、和尚はこのごろお寺におらんよ」
この婆さん、なかなかしたたかものだ。和尚がおろうがおるまいが、そんなことは問題にしておらんのである。
「そうか、和尚は留守か。どこへ行かれたかな。」
すると婆さん、黙ってサッサと自分の行く方向へ行ってしまった。この通りにいきよったわいと言わんばかりである。すると臨済が
「ちょっと、ちょっと婆さん」
と呼ぶと、婆さんがフッと後ろを振り返った。そこで臨済は、だまって、知らん顔して行ってしまった。これは婆さんの負けだ。
 有名な師匠との問答の場面ばかりを記した行録の中にあって、一人の老婆とのやりとりを取り上げているのは極めて異例です。他の話は、すべて禅僧とのやりとりですので、そのこと自体、たいへん珍しいことではあります。
 ただ、これを見る限り、臨済の人の悪さに眉目を寄せる読者も多いかと思います。老婆の人の悪さもなかなかですが、臨済はその上を行っているようにも映ります。また、それが老婆への報復を意図するものだとしたら、仏教徒にあるまじき行為です。(以下②/③につづく)

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※クリックすると拡大して見られます。
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